柏崎和久
株式会社I.T.I、SAKERISE代表取締役
宇都宮市生まれ。中央大学理工学部電気電子工学科 卒業。関電工で18 年間、送配電業務に従事。その後、 電力・エネルギー業界において複数企業の経営とプ ロジェクトに携わる。技術士(経営工学部門)&唎酒師
2025/
09/25
柏崎和久
株式会社I.T.I、SAKERISE代表取締役
宇都宮市生まれ。中央大学理工学部電気電子工学科 卒業。関電工で18 年間、送配電業務に従事。その後、 電力・エネルギー業界において複数企業の経営とプ ロジェクトに携わる。技術士(経営工学部門)&唎酒師
「なぜ、SAKE RE100をやっているのですか?」と尋ねられることがあります。正直に言えば、その答えはひとつではありません。いくつもの事象や縁が重なり合い、まるでアメーバのように有機的に繋がっているからです。
私はこれまで電力・エネルギー業界に身を置き、地域のマイクログリッド構築や再生可能エネルギーの導入支援など、数多くの現場に携わってきました。そこで見えてきたのは、巨大システムに依存する危うさと、日本のエネルギー自給率の低さという現実です。同時に、資本主義のもとで「儲からなければやらない」という価値観が支配し、自然や文化、人の心の豊かさが置き去りにされていることへの違和感でもありました。
こうした思いを抱えていた私に、一つのご縁が訪れました。6代目蔵元・西堀さんとの出会いです。日本酒という、日本文化の象徴ともいえる存在と、私自身が歩んできたエネルギーの世界を掛け合わせることができるのではないか――。それが、SAKE RE100の発端となりました。
さらに、9代目蔵元・伊東さんとの出会いによって、このプロジェクトに魂が吹き込まれました。単なる発想や仕組みではなく、日本酒を愛し、地域に根ざす人々の想いと結びついたことで、初めて「文化を守り、未来を紡ぐプロジェクト」としての輪郭が明確になったのです。
私は、日本酒を心から愛しています。その深い香り、味わい、季節や土地を映し出す個性――。日本酒は単なる飲み物ではなく、長い歴史と人々の営みをまとった文化そのものです。だからこそ、日本酒を媒介にしながら、環境問題やエネルギー問題を「自分ごと」として捉え直すことに、大きな意味があるのだと思います。
環境問題や地球温暖化といったテーマは、個人にとってはあまりに大きく、遠い存在のように感じられがちです。しかし「この一杯の日本酒を楽しむことが、再生可能エネルギーの導入や脱炭素に繋がっている」としたらどうでしょうか。少し身近に感じられ、参加したくなるはずです。
SAKE RE100が販売する日本酒は、プロジェクトに賛同する酒蔵が醸すものです。売上の一部は、酒蔵の再エネ比率を高める取り組みに還元されます。小さな取り組みに見えるかもしれません。しかし私は、この小さな実践こそが、資本主義に対するささやかな抵抗であり、次の時代に必要な価値観――「共感」「調和」「自然との共生」へと繋がる一歩だと信じています。
約200年かけて築かれた資本主義というOSを、すぐに入れ替えることはできません。ですが、新たなOSの断片を少しでも形づくることはできる。その一つが、SAKE RE100だと考えています。
このプロジェクトには、私の人生で培ったエネルギー分野での経験と、日本酒への愛情、そして西堀さん・伊東さんとのご縁がすべて込められています。大げさに聞こえるかもしれませんが、これは「未来への布石」であり、日本の文化と自然、そして人の心の豊かさを守るための挑戦なのです。
どうか、皆さまにもこの想いに共感いただき、一緒に「粋な未来」を育てていただければ幸いです。