私は、経営の技術士です。仕事を科学的に分析し、ビジネスを計画的に管理し、企業経営の未来を見通すことを助言できる資格を持っています。いわば、デーにタ重視の「分析的経営」、人の温もりから遠い「計画的経営」の専門家です。
そんな私が、なぜ、野性的経営の必要性を訴えているのか。それは、こうした専門性は、意思決定の際に役に立つことはあっても、往々にして生活環境に蓄積された美的な価値を犠牲にしています。また、私自身の数多くの経営やプロジェクトの失敗は、「分析的経営」「計画的経営」に過剰に取り組んだことが原因だからです。更に今に至っては、分析や計画を永遠と繰り返し、課題が先送りされビジネスの勝機を失う組織を数多く見ているからです。
多くの日本企業は、人間一人ひとりの主観や直観といった暗黙知を捨象し、客観的分析モデルをつくることが企業経営だという潮流に傾いた結果、過剰分析と、過剰計画に陥りました。更に、昨今は、過剰規則(オーバー・コンプライアンス)に陥り、多くの企業や個人が、身動きがとれない状況となっています。
このような状況の中では、変化の中でかき消されそうになる価値に目を向けることが重要ではないでしょうか。先行きを見通すことが難しい状況だからこそ、デジタルやサイエンスの進化による便利さや安全を享受しつつ、直観力や共感力など、人間本来の野性の力に依拠した経営が必要なのです。