柏崎和久
株式会社I.T.I. 代表取締役社長

2025/
10/26

最近では日本酒事業「SAKE RE100」にも取り組んでいるため、
多くの方から「柏崎さんの仕事は謎ですね」と言われることがあります。
確かに、電力・エネルギー業界を歩んできた私が「マイニング」と聞くと、意外に映るのかもしれません。
けれども、一歩踏み出したその先には、エネルギーの未来を拓く可能性が広がっているのです。
私が長年携わってきた地域のマイクログリッドや再生可能エネルギーの現場では、
常に「余剰電力」という課題がつきまといます。
今後、卒FITを迎える太陽光発電所が急増し、出力を落とすしかない設備や、
使われずに流れていく電気がさらに増えていくでしょう。
現場では出力制御(昔は出力抑制と言われていました)という言葉が飛び交います。
再エネは自然条件に左右されるため、
使いきれない電力が発生する一方で、必要なときに足りないというアンバランスを抱えています。
この「余った電気」をどうするのか――それは、業界全体が長年悩み続けてきたテーマです。
すでに事業化に挑戦している会社もあります。
たとえば、東京電力パワーグリッドの子会社である Agile Energy X。
系統が抱える課題を解決しようとする動きは確実に始まっています。
だからこそ私は思うのです――「東電さんが困っているのであれば、なんとかしたい」と。
多くの人々は「余剰そのもの」を問題視します。
しかし本質的には、新しい需要を生み出せば、余剰は問題ではなくなるのです。
私はここに、「マイニング装置がデータという価値を生み出す新たな需要になる」という
シンプルかつ強力な解決策を見出しています。
私は今年4月、自らマイニングマシンを購入し、稼働を始めました。
なぜか――机上の議論だけでは、何も生まれないからです。
とにかく現場で動かしてみる。
音や熱、電力の消費といった生々しい実感を得る。
その中からしか、本当の知恵は生まれません。
多くの人はこう言います。「無謀だ」「お金にならない」と。
しかし私は、むしろそこにこそ価値を感じます。
行動しなければ繋がりは生まれず、経験しなければ気づきもありません。
実際にマシンを稼働させて得られた最大の収穫は、
エネルギー業界の外にいる若い世代との出会いでした。
ブロックチェーンや暗号資産の領域で挑戦する彼らと語り合い、
「エネルギーとデジタルの未来」を共に考える場が自然と生まれたのです。
これは投資ではなく、経験であり、縁を呼び込む行為でした。
日本の地方には、エネルギーを生み出しても使い切れない地域が数多く存在します。
もしこの余剰電力をマイニングに活用できれば、
地方に新しい産業が芽生え、雇用や経済の循環が生まれる可能性があります。
さらに、マイニングはブロックチェーンという次世代インフラを支える根幹です。
電力の有効活用とデジタル社会の基盤づくり――
この二つを同時に推進できる領域は、他にありません。
私はマイニングを、単なる暗号資産の獲得手段ではなく、
**「電力システムと社会をつなぐ装置」**として捉えています。
そこにこそ、未来の産業の芽があるのです。
今、日本のエネルギー政策は「供給の強靭化」と「再エネの地域活用」、
そして「デジタル産業との融合」に舵を切りつつあります。
高市首相が掲げる方針の中でも、地方における新たな電力需要の創出と
分散型エネルギーの最適化は重要な柱です。
私が取り組むマイクログリッドやマイニング事業も、まさにこの方向性と一致しています。
地方が自らエネルギーをつくり、使い、そして価値を生み出す。
その現場からこそ、日本の次のエネルギー時代が始まると信じています。
こうした小さな一歩の延長線上で、
私はこの10月から 株式会社ゼロフィールド の経営顧問に就任することになりました。
ゼロフィールドは、マイニング事業を通じて
「電力最適化」「余剰電力の活用」「ブロックチェーン技術の社会実装」に挑む先進企業です。
私自身の経験と知見を活かし、余剰電力を価値に変える仕組みをつくり、
地方から新しい市場を創出していきたい。
今回の顧問就任は、その挑戦を加速させるための大切な一歩です。
約200年続く資本主義というOSを、一夜にして変えることはできません。
しかし、その中で「次の時代に必要な断片」を形づくることはできます。
SAKE RE100が文化を通じて脱炭素を身近にしているように、
マイニングもまた、電力とデジタル社会をつなぎ、新しい価値観を生み出す挑戦です。
私はこれからも、現場で試し、仲間と繋がり、未来を描く挑戦を続けていきます。
「地方から、エネルギーの未来を面白く」――この言葉を胸に。
マイニング事業にも、私の想いを込めて取り組んでまいります。